大企業マーケ責任者の生成AI活用実態|「救世主」と「脅威」が同居する現場のリアル

大企業マーケ責任者の生成AI活用実態|「救世主」と「脅威」が同居する現場のリアル

大企業のマーケティング現場では、生成AIの導入が「便利な効率化ツール」の段階を超え、業務設計や人材戦略そのものに影響を与え始めています。株式会社IDEATECHの調査では、マーケ責任者の6割以上が生成AIを「実務を救う救世主」と捉える一方、約3割は「自らの専門性やキャリアへの脅威」とも感じていることがわかりました。

生成AI活用に関する大企業マーケ責任者調査のイメージ

生成AIは「救世主」か「脅威」か、大企業マーケ責任者の本音

今回の調査は、年商1,000億円以上または従業員数1,000名以上の大企業でマーケティング責任者・管理職として働く111名を対象に実施されました。結果として、生成AIは実務負荷を下げる存在として高く評価されている一方で、役割の再定義を迫る存在でもあることが浮き彫りになっています。

  • 「実務の作業量や時間を減らす救世主」:62.2%
  • 「新しいスキルを学ぶきっかけを与える存在」:62.2%
  • 「自らの専門性やキャリアを脅かす脅威」:29.7%
  • 「成果へのプレッシャーを高める存在」:23.4%

特に注目したいのは、「救世主」と「脅威」が同時に語られている点です。効率化を歓迎しつつも、その先にある評価基準の引き上げや、担当者の役割変化を多くの人が実感していると考えられます。

実務で進むのはレポート作成とテキスト生成

生成AIへの移行が進んでいる業務としては、「週次・月次のデータ集計やレポート作成」が62.2%、「SEO記事・ホワイトペーパー等のテキスト生成」が61.3%で上位に入りました。次いで「広告クリエイティブ(バナー・動画案)の量産」や「カスタマーサポート(FAQ・チャットボット)」も49.5%と高い水準です。

  • 週次・月次のデータ集計やレポート作成:62.2%
  • SEO記事・ホワイトペーパー等のテキスト生成:61.3%
  • 広告クリエイティブの量産:49.5%
  • カスタマーサポート(FAQ・チャットボット):49.5%
  • デジタル広告の配信設定・入札最適化:25.2%

つまり、まず置き換わりやすいのは、定型化しやすく、一定品質を短時間で出しやすい業務です。逆に、戦略立案や顧客理解が深く求められる領域は、まだ人の関与が大きいと見られます。

作業時間は半数以上削減、外注構造にも変化

生成AIの導入によって現場の作業時間がどう変わったかを見ると、「50%~70%未満削減できた」が28.6%、「70%~90%未満削減できた」が18.1%、「90%以上削減できた」が6.7%でした。半数以上が、作業時間を50%以上削減できたと回答しているのは印象的です。

その影響は外部パートナーとの関係にも及んでいます。

  • 作業ベースの業務の内製化が進み、外注費を削減:39.6%
  • 上流工程を内製化し、外部には作業のみ発注:22.5%
  • AI活用を前提に高度な提案をする代理店へ乗り換え:21.6%

この結果からは、単なる業務効率化にとどまらず、「誰に何を任せるか」という発注構造そのものが変わり始めていることが読み取れます。

生成AI活用で業務効率化や内製化が進む様子を示す画像

効率化の先にあるのは「量産」だけではない

生成AIによる効率化が本来のミッションである最終成果につながっているかについては、「十分に成果の増加に結びついている」が27.0%、「ある程度は成果の増加に結びついている」が55.0%でした。合計すると82.0%が、成果向上に手応えを感じています。

また、浮いた時間や予算の使い道として最も多かったのは「デジタル広告・Webコンテンツのさらなる量産」で60.2%。一方で、「ファンコミュニティ構築やリアル体験の価値向上」49.5%、「ブランド思想(ナラティブ)の再構築・設計」46.6%も上位に入りました。

  • デジタル広告・Webコンテンツのさらなる量産:60.2%
  • ファンコミュニティ構築やリアル体験の価値向上:49.5%
  • ブランド思想の再構築・設計:46.6%
  • 新しいAIツールのリサーチや社内導入の拡大:39.8%

ここには、AIで空いたリソースを「さらに作る」ことだけでなく、ブランドや体験のようなAIでは代替しにくい領域へ再投資したいという意識の高まりが見えます。

経営陣からのROI説明プレッシャーは強い

一方で、生成AI投資に対するROI説明には大きなプレッシャーがかかっています。経営陣や上層部から明確な成果貢献を求められることに対し、「非常に強いプレッシャーを感じている」が28.8%、「ある程度プレッシャーを感じている」が56.8%でした。

つまり、現場は効率化の効果を実感していても、それを経営指標としてどう見せるかという課題はまだ残っています。生成AIは導入するだけでは不十分で、効果測定の設計まで含めて運用する必要があると言えそうです。

AI時代に求められるのは「使う力」と「見立てる力」

AI時代にマーケターとして生き残るために必要な能力としては、「AIを高精度に動かすプロンプトスキル・操作技術」が30.6%で最多でした。ただし、「顧客の本質的なインサイトを掴む力」と「独自のストーリーを立ち上げる構想力」もそれぞれ29.7%と僅差です。

  • プロンプトスキル・操作技術:30.6%
  • 顧客インサイトを掴む力:29.7%
  • 独自のストーリーを立ち上げる構想力:29.7%
  • プロジェクトマネジメント力:8.1%

この結果は、AIを扱う技術だけでなく、何を作るべきかを見極める力がますます重要になることを示しています。単なる操作スキルでは差別化しにくく、顧客理解と構想力が価値の源泉になっていくのでしょう。

採用にも波及、技術層の拡大とジュニア層の見直しへ

生成AIの普及は採用計画にも影響しています。「AIを使いこなせる技術層の採用を拡大する」が47.7%で最多となり、「定型業務中心のジュニア層の採用を縮小・見直す」が25.2%でした。

これは、マーケティング部門でも人材要件が変化していることを意味します。今後は、単に作業をこなせる人材よりも、AIを前提に成果を出せる人材が求められる場面が増えていきそうです。

まとめ:生成AIは「作業削減」から「組織再設計」へ

今回の調査から見えてきたのは、大企業のマーケティング現場で生成AIがすでに日常業務に入り込み、作業時間削減、内製化、外注構造の変化、採用見直しまで波及している実態です。

ただし、効率化が進むほど、経営層へのROI説明や、量産以外の価値創出がより重要になります。今後の焦点は、AIで空いたリソースをどこに振り向けるか、そして人にしかできない役割をどう再定義するかでしょう。

生成AIを単なる時短ツールとして終わらせず、マーケティング組織全体の設計を見直すきっかけとして活用できるかどうかが、これからの分かれ道になりそうです。

参考記事

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000709.000045863.html

この記事を書いた人Wrote this article

sorein

sorein 教育×ITフリーランス / 女性

小〜高校教員として勤務し、製造業の社内SEを経験して教育×ITフリーランスになったsoreinです!教員免許や基本情報技術者、応用情報技術者、DBスペシャリストの資格を取得しています!ITニュースや技術書を読むのは趣味みたいになっています。