キャリア志向は「未定」がトップに

卸売業・小売業の新入社員を対象にした調査で、将来のキャリアを「今後決めたい」と答えた人が30.6%と過去最高になりました。これまで目立っていた管理職志向はやや低下し、働き方や成長観にも変化が見られます。

本記事では、ALL DIFFERENT株式会社の「新入社員調査2026(卸売業・小売業編)」をもとに、新入社員の価値観の傾向と、企業側が今後意識したい育成のポイントを整理します。

卸売業・小売業の新入社員調査のイメージ

キャリア志向は「未定」がトップに

今回の調査で最も印象的だったのは、将来会社で担いたい役割として「まだはっきりしておらず、今後決めていきたい」が30.6%で1位になったことです。これは8年間の調査で初めての結果でした。

一方で、「組織を率いるリーダーとなり、マネジメントを行いたい(管理職)」は27.0%、「専門性を極め、スペシャリストとしての道を進みたい(専門職)」は16.7%でした。特に管理職志向は4年前より10ポイント低下しており、キャリア観が以前より分散していることがわかります。

背景には、AIやDXの進展で仕事の将来像が見えにくくなっていることもありそうです。最初から明確な進路を描くより、実務を通じて見極めたいという考え方が強まっているのかもしれません。

リーダー像は意外にもポジティブ

キャリア志向が定まっていない一方で、リーダーに対する印象は前向きでした。最も多かったのは「リーダーシップが求められそう」(46.8%)で、「成長できそう」(39.6%)、「やりがいがありそう」(38.7%)が続いています。

他業種と比べても、卸売・小売業の新入社員はリーダー職に対して、難しさやストレスよりも成長機会や達成感を感じやすい傾向がありました。管理職志向は下がっていても、リーダー役割そのものへの抵抗感は強くないようです。

勤続意向は高め。残りたい理由は「人間関係」と「給与」

「今の会社で働き続けたいか」という質問では、「できれば今の会社で働き続けたい」が68.5%と約7割を占めました。業界全体の中でも、比較的勤続意向は高い結果です。

その条件として重視されたのは、「職場の人間関係が良い」(68.9%)と「高い給与・賞与をもらえる」(63.1%)でした。さらに「業績が安定している」も39.2%と高く、安定性への関心がうかがえます。

一方で、「仕事を通じて成長できる」は24.3%にとどまりました。成長意欲が低いというより、まずは安心して働ける環境を優先していると見るほうが自然でしょう。

成長の実感は「成功体験」と「失敗体験」から

自分の成長に必要なものとしては、「仕事を通じた成功体験」(65.3%)がトップでしたが、「仕事を通じた失敗体験」(63.5%)も僅差で続きました。

失敗を避けるのではなく、経験から学びたいという姿勢が見える結果です。現場での実体験を通じて身につけたい、という意識が強いとも言えます。

ただし、「上司や先輩からの事後のフィードバック」や「振り返りの習慣」は他業種より低めでした。育成の場では、本人任せにせず、具体的に伝える・正す・手順を示す関わりが重要になりそうです。

理想の上司は「間違いを指摘してくれる人」

理想の上司として最も多かったのは、「間違いを指摘して正してくれる」(57.7%)でした。次いで、「具体的に手順を細かく教えてくれる」(46.4%)、「仕事やキャリアの悩みを相談できる」(38.7%)が続きます。

新入社員は、ただ自由に任せられるよりも、丁寧な指導や軌道修正を求めていることがわかります。特に現場での習得が多い卸売・小売業では、この傾向がより強く出やすいのでしょう。

やりたい仕事は「楽しくてやりがいのある仕事」

今後やりたい仕事として最も多かったのは、「楽しくてやりがいのある仕事」(68.0%)でした。「楽しく取り組める仕事」(29.7%)、「自身の成長につながる仕事」(29.3%)が続いています。

他業種と比較すると、専門性の高い仕事やチームで取り組む仕事、成長につながる仕事はやや低めでした。まずは日々の仕事に納得感があり、前向きに取り組めることが重要だと考えているようです。

主体性はあるが、学び続ける意識はやや低め

主体的に取り組みたい行動では、「自分で目標を立てて行動する」(45.0%)がトップでした。「周囲の状況を見て、指示がなくても行動する」(42.3%)も高く、受け身一辺倒ではありません。

その一方で、「自分の成長のために学び続ける」は14.9%と低めでした。ここは、今後の育成設計で補っていきたいポイントです。日々の業務の中で学ぶ意味を実感できる仕組みがあると、主体性と学習意欲がつながりやすくなります。

企業が意識したい育成のポイント

今回の調査から見えてきたのは、卸売・小売業の新入社員が安定志向で、実務を通じた学びを重視しているという姿です。将来像が未定でも、リーダー役割への拒否感は強くなく、適切な支援があれば成長していける可能性があります。

  • 将来像を最初から固定せず、段階的に考える機会をつくる
  • 業務スキルだけでなく、思考力・対話力・判断力も育てる
  • フィードバックや振り返りを日常業務に組み込む
  • 「できるようになった実感」が持てる小さな成功体験を増やす
  • 管理職候補だけでなく、現場リーダーの育成も早めに意識する

特に小売業では、早い段階で後輩指導や売場責任を担うこともあります。だからこそ、専門知識の習得だけでなく、自ら考え、伝え、周囲と協力する力を育てることが欠かせません。

新入社員の「まだ決めきれない」という感覚は、迷いというより、変化の激しい時代に合わせた慎重さとも言えます。企業側がその状態を前向きに受け止め、日々の経験を通してキャリアを描けるよう支えることが、これからの人材育成ではますます重要になりそうです。

参考記事

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000301.000005749.html

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sorein

sorein 教育×ITフリーランス / 女性

小〜高校教員として勤務し、製造業の社内SEを経験して教育×ITフリーランスになったsoreinです!教員免許や基本情報技術者、応用情報技術者、DBスペシャリストの資格を取得しています!ITニュースや技術書を読むのは趣味みたいになっています。