フリーランス協会が公開した「フリーランス白書2026」では、フリーランス法の施行後に何が変わったのか、そして会社員との社会保険格差がどのように受け止められているのかが、具体的な数字とともに示されました。
今回の調査では、年収や働き方の満足度といった定点観測に加え、取引先との関係、インボイス制度、労災保険、社会保険制度への不安など、独立して働く人が直面する課題が幅広く可視化されています。フリーランスとして働く人はもちろん、副業・複業を考える会社員にとっても、今後の働き方を考えるうえで参考になる内容です。
フリーランス白書2026で何が調査されたのか
「フリーランス白書2026」は、毎年行われるフリーランス実態調査に加えて、今回は次のようなテーマが重点的に扱われています。
- 今の働き方に対する課題
- フリーランス法施行後の取引先との関係
- インボイス制度に関する現状
- 社会保険制度への意識や不安
- 会社員との保障の違いに対する認識
特に注目したいのは、単なる「満足・不満足」の調査ではなく、制度面の不安が働き方の選択にどう影響しているかまで掘り下げている点です。
収入と稼働時間は? フリーランスの働き方の実態
調査によると、月間稼働時間が「140時間以上」の回答者は48.5%で、フルタイムに近い働き方をしている人が約半数を占めました。年収では「400万円以上」が49.5%と約半数で、「200万〜400万円未満」が27.7%、「400万〜600万円未満」が19.9%でした。
また、自身の収入が世帯収入の8割以上を占める人は51.0%に達しており、フリーランス収入が家計の中心になっているケースが多いことがわかります。
仕事獲得経路では、最も稼げるのは「人脈」、次いで「過去・現在の取引先」、「エージェントサービス」という結果でした。やはりフリーランスにとっては、実績に加えて信頼関係の蓄積が重要だといえます。
満足度は高い一方で、収入や社会的地位への不満は残る
働き方の満足度は全体として高く、多くの項目で7〜8割の人が満足していました。自由度の高い働き方やキャリア自律を評価する声が強い一方で、「多様性に富んだ人脈形成」「収入」「社会的地位」については、満足している人が3〜4割にとどまっています。
つまり、フリーランスは「自分で選べる働き方」に魅力がある反面、経済的安定や社会的な見え方にはまだ課題が残っているということです。
フリーランス法施行後、取引環境は改善したのか
フリーランス法について、取引先との会話で話題に出たことがある人は21.7%でした。法律施行後に「フリーランス法違反だと感じたことがある」と答えた人は28.5%で、違反を感じた際に自ら説明や交渉をした人は27.5%にとどまります。
一方で、取引条件の明示義務などにより、「課題が改善されてきている」と感じる人も一定数います。フリーランス法の認知はまだ十分とはいえませんが、制度があることで交渉の土台が整ってきた面はありそうです。
行政に期待する対応としては、「違法・取り締まり事例の公開」が63.5%と最も多く、ルールを知るだけでなく、実際にどう運用されているかを見せてほしいというニーズがうかがえます。
労災保険やインボイス制度の現状
労災保険の特別加入については、認知度が42.7%、加入割合は10.4%でした。フリーランスにとって、万が一のケガや事故に備える制度でありながら、まだ十分に広がっていないのが実情です。
インボイス制度では、登録申請者が47.3%、登録しないつもりの人が28.2%でした。また、取引先から受け取る支払書に消費税額が「ほとんど記載されている」との回答は61.0%で、実務上の対応が進んでいることも見えてきます。
ただし、簡易課税制度を理解し、申請している人は16.3%にとどまり、税務対応の複雑さは依然として大きな壁です。
最も大きい不安は社会保険制度への不満
現在の社会保険制度については、68.2%が「不安」と回答し、「安心している」は6.7%でした。この結果はかなり重く、フリーランスの暮らしを支えるセーフティネットに対する信頼が十分ではないことを示しています。
さらに、「会社員・フリーランスなど働き方に関わらず、医療や雇用、老後の生活に対する社会保障が必要」と考える人は96.6%に達しました。働き方の違いがあっても、最低限の保障は共通であるべきだという意識が非常に強いことがわかります。
独立前には、健康保険、育児・介護休業、教育訓練、遺族・障害年金などの格差を知らなかった人が多かった点も見逃せません。実際に独立してから初めて、会社員との制度差の大きさに気づくケースが多いようです。
フリーランスが望む社会保険制度の形とは
調査では、保険料を自己負担してでも会社員同等の保障を得られる雇用保険や、健保組合・厚生年金への加入を望む人がそれぞれ6割にのぼりました。
また、社会保険制度改革のアイデアに対する賛否では、次のような結果が出ています。
- 発注者と労使折半で社会保険料を負担する案:賛成40.0%
- 自ら労使双方分を負担して社会保険に加入できる案:賛成60.4%
- 所得に応じてすべての働く人が保険料を支払う案:賛成70.2%
この結果からは、単に負担を減らしたいというよりも、働き方にかかわらず納得感のある制度を求める声が強いことが読み取れます。
国保組合や“脱法スキーム”への視線も厳しい
個人事業主が利用できる国保組合については、実際に特権を利用できているフリーランスは1割にも満たず、加入したくてもできない人が4割、国保組合自体を知らなかった人が3割でした。
さらに、就労実態のない団体に会費を払って社会保険に加入するような脱法的なスキームについては、8割が問題視しています。制度の不公平感が強いほど、グレーな方法への反発も大きいといえるでしょう。
フリーランス白書2026から見えるこれからの課題
「フリーランス白書2026」は、フリーランスの自由度の高さと引き換えに、収入の不安定さ、社会保障の薄さ、制度理解の難しさが依然として大きな課題であることを示しました。
一方で、フリーランス法の施行や取引条件の明示など、環境改善につながる動きも確実に進んでいます。今後は、制度の周知だけでなく、実際に使いやすい仕組みへ改善していくことが重要になりそうです。
フリーランスとして働く人は、自分の働き方を見直すきっかけとして。会社員で副業・複業を考える人は、独立後に必要な備えを知る材料として。この調査は、多くの人にとって現実的なヒントを与えてくれる内容でした。
参考記事

この記事が気に入ったら
フォローをお願いします!
この記事を書いた人Wrote this article
sorein 教育×ITフリーランス / 女性
小〜高校教員として勤務し、製造業の社内SEを経験して教育×ITフリーランスになったsoreinです!教員免許や基本情報技術者、応用情報技術者、DBスペシャリストの資格を取得しています!ITニュースや技術書を読むのは趣味みたいになっています。

