日立製作所は、製造業の品質保証業務を支援するAIエージェント「品質ナレッジシステム」を、HMAX Industryのラインアップとして2026年4月から提供開始しました。熟練者のノウハウを形式知化し、トラブル対応の検索やレポート作成、原因分析を大幅に効率化するのが大きな特徴です。
品質保証の現場で起きている課題
製造業では、人材不足や世代交代に加えて、製品やシステムの高度化が進み、品質保証業務の難易度が年々高まっています。とくにトラブル発生時は、過去の事例や保守運用の知見をすばやく探し出し、適切に対応する必要があります。
ただ、こうした業務はベテラン技術者の経験や勘に依存しやすく、担当者によって判断や対応スピードに差が出やすいという課題がありました。日立は、この属人化をAIで解消しようとしています。
熟練者の暗黙知をAIに組み込む仕組み
今回のAIエージェントは、膨大な過去の品質関連データをもとに、熟練者がどのような順序で情報を探し、どう判断してきたかを分析します。そのうえで、これまで暗黙知として蓄積されていたノウハウを形式知化し、AIに反映しています。
中核には、日立の専門組織「Generative AI センター」の知見が活用されています。100件以上の業務知見をAIに組み込み、プロンプトの改善やチューニングを重ねることで、現場で使える実用性を高めた点が印象的です。
主な機能は3つ
- 高精度な検索:自然言語の質問や問い合わせメールから、過去の対応記録やマニュアルを素早く検索
- ドラフトレポート作成:事象や対策方針を入力するだけで、読みやすい対応レポートを自動生成
- 品質状況の分析:トラブル傾向を多角的に分析し、不具合抑止や品質向上を支援
特に検索とレポート作成は、担当者の経験値に左右されにくい点が大きなメリットです。問い合わせ対応の初動が早くなれば、顧客満足度の向上にもつながります。
自社導入で効果を実証
日立は、大みか事業所で自ら先行導入する「カスタマーゼロ」の取り組みを実施しました。その結果、トラブル対応事例の検索時間は約9割、対応レポート作成時間は8割以上、不具合の原因分析時間も8割以上削減できたとしています。
たとえば、検索は1件あたり60分から5分へ、レポート作成は120分から15分へ、原因分析は16時間から3時間へ短縮されたとのことです。数字で見ると、現場へのインパクトの大きさがよく分かります。
今後は設計・製造・保守にも広がる可能性
日立は今後、品質保証業務だけでなく、設計や製造、保守の領域にも同様のサービス展開をめざしています。さらに、ナレッジを工程間で循環させることで、現場の知恵を上流工程へフィードバックする好循環も構想しています。
将来的にはOT領域との連携も視野に入れており、フィジカルAIとしての展開も目標にしています。単なる業務効率化にとどまらず、製品品質そのものの向上につながる可能性がある点が注目ポイントです。
製造業DXの実装フェーズが進む
生成AIは「試す」段階から「現場で成果を出す」段階へ移りつつあります。日立の今回の取り組みは、AIを現場の知識と結びつけることで、実務に耐える形へ落とし込んだ好例といえるでしょう。
品質保証は、企業の信頼を左右する重要な業務です。そこにAIが入り、ベテランの知見を再現しながら若手の支援もできるようになれば、製造業の働き方はさらに変わっていきそうです。
参考記事

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この記事を書いた人Wrote this article
sorein 教育×ITフリーランス / 女性
小〜高校教員として勤務し、製造業の社内SEを経験して教育×ITフリーランスになったsoreinです!教員免許や基本情報技術者、応用情報技術者、DBスペシャリストの資格を取得しています!ITニュースや技術書を読むのは趣味みたいになっています。